世界初の生物学的製剤「ゾレア」とは?

ゾレア(一般名:オマリズマブ)は、気管支喘息や特発性慢性蕁麻疹(じんましん)、そして「重症の季節性アレルギー性鼻炎(スギ花粉症)」に対して使用できる注射薬です。

これまでの花粉症の薬(抗ヒスタミン薬など)は、アレルギー症状が出てからそれを抑えるものでした。しかし、ゾレアはアレルギー症状を引き起こす原因物質「IgE抗体」そのものの働きをブロックすることで、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみといった辛い症状を元から抑え込みます。

飲み薬と何が違う?「蛇口」と「床」のお話

「今まで色々な薬を試したけれど、どうしても鼻水が止まらない…」

そんな方にこそ知っていただきたいのが、ゾレアと一般的な飲み薬(抗ヒスタミン薬)の決定的な違いです。

花粉症の症状を「バケツから床にこぼれた水」に例えると、その違いは以下のようになります。

  • 一般的な飲み薬 = 「あふれた水を拭き取る」
    バケツからあふれてしまった水(=出てしまった鼻水やくしゃみ)を、雑巾で一生懸命に拭き取るようなものです。
    あふれる水の勢いが弱い(軽症)なら間に合いますが、勢いが凄まじい(重症)と、拭き取るのが追いつかず、床は水浸しになってしまいます。これが「薬を飲んでいるのに効かない」状態です。
  • ゾレア = 「水道の蛇口(元栓)を閉める」
    ゾレアは、アレルギーの元となる物質(IgE抗体)をブロックします。
    つまり、水が流れ出る「蛇口」そのものをギュッと閉める治療です。大元の栓を閉めてしまうため、どれだけ花粉が飛んでいても、そもそも水(症状)があふれ出しにくくなるのです。

このように、症状が出てから対処するのではなく、「症状が出るスイッチ(蛇口)を元から断つ」のがゾレアの最大の特徴です。

だからこそ、飲み薬や点鼻薬ではどうにもならなかった「滝のような鼻水」や「目を取り出したくなるような痒み」を、劇的に改善できる可能性があるのです。

参考リンク(外部サイト):独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)|ゾレア皮下注 添付文書※正式な効能・効果や副作用情報はこちらをご確認ください。

健康保険は適用になる?保険適用の「4つの条件」

ゾレアは非常に強力な薬剤であるため、誰でもすぐに打てるわけではありません。健康保険を使って治療を受けるには、以下の厳しいガイドライン(条件)をすべて満たす必要があります。

【重症花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)の適用条件】

  1. 重症または最重症であること くしゃみや鼻水の回数が非常に多い、または鼻づまりがひどく、日常生活に大きな支障がある状態です。
  2. スギ花粉が原因であること 血液検査でスギ花粉抗体のクラス3以上(陽性)であることが必須です。
  3. 既存の治療で効果が不十分であること 抗アレルギー薬(飲み薬や点鼻薬)を1週間以上使用しても、症状が改善しないことが確認される必要があります。
  4. 12歳以上で、血清IgE濃度などが基準範囲内であること 血液検査の結果(総IgE値)と体重に基づいて投与量が決定できる範囲内である必要があります。

治療開始までの流れ(検査~投与)

ゾレアの治療には、初回投与までに最低でも2回の来院が必要です。

STEP 1:初診・既存治療の開始

まずは通常の診察を受けていただき、抗アレルギー薬(飲み薬・点鼻薬など)を処方します。これを1週間しっかり使っていただきます。「それでも症状が治まらない」という事実が、ゾレア投与の条件となります。

STEP 2:血液検査・適応判定

1週間後に再来院いただき、薬の効果を確認します。効果が不十分な場合、血液検査を行います。

ここで調べるのは以下の項目です。

  • スギ花粉特異的IgE抗体の量(クラス3以上か)
  • 総IgE値(投与量を決める数値)

※同時に「体重測定」も行います。ゾレアの投与量は「総IgE値」と「体重」の組み合わせで厳密に決まるためです。

STEP 3:投与量の決定・予約

血液検査の結果(約1週間後)をもとに、ゾレアの投与量と頻度を決定し、初回投与の予約を行います。※院内に在庫がある場合は当日投与できることもありますが、基本的には取り寄せとなります。

STEP 4:ゾレアの皮下注射

肩や腕などに皮下注射を行います。投与後は副作用確認のため、しばらく院内で待機していただく場合があります。

※2回目以降は、決められた期間(2週間または4週間隔)で通院していただきます。

投与頻度と回数について

患者様の「総IgE値」と「体重」によって、以下のパターンに分かれます。

投与間隔1回の投与本数
4週間に1回1本 〜 3本
2週間に1回1本 〜 4本

スギ花粉症の場合の治療期間は、2月〜4月(5月)頃までの花粉飛散シーズン中となります。

一番気になる「費用」の話

ゾレアはバイオ医薬品であるため、通常の薬に比べて薬価(薬の値段)が高額です。
保険適用(3割負担)の場合でも、以下の費用がかかります。

■ 費用の目安(3割負担の場合)

投与量によって幅がありますが、薬剤費のみで1回あたり 約4,500円 〜 約70,000円 です。

これに診察料や処方料などが加算されます。
※事前の血液検査にも約5,000円〜6,000円(3割負担)がかかります。

■ 「高額療養費制度」や「付加給付」が使える可能性があります

「あまりに高すぎる…」と諦める前にご確認ください。 健康保険組合や年齢、年収によっては、「高額療養費制度」を利用することで、1ヶ月の自己負担額に上限が設けられ、超過分が払い戻される場合があります。

また、お勤め先の健康保険組合によっては、独自に「月2万円以上は会社が負担する」といった「付加給付制度」がある場合もございます。ぜひ一度、ご加入の健康保険証に記載されている保険者へお問い合わせください。

参考リンク(外部サイト):

厚生労働省|高額療養費制度を利用される皆さまへ

まとめ:ゾレアは、今までの治療で効果が十分得られなかったかたに試していただく治療として有効です

ゾレアは費用や条件のハードルこそ高いですが、「仕事や受験に集中できない」「夜も眠れない」といった重篤な症状にお悩みの方にとっては、劇的に生活の質(QOL)を改善できる可能性があります。

田中クリニックでは、患者様の症状とライフスタイル、そして経済的なご負担も考慮しながら、最適な治療法を一緒に検討いたします。

「自分は対象になるのか?」とお悩みの方は、まずは一度ご相談ください。